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「で?どうだったの、お燎。…いえ、やっぱりいいわ。なんとなく、顔をみればわかるから」
バレンタインとかいう、異国の行事を楽しんだ後。
燎は早々に秋の国へ戻ってきており、冬へ行っている間に溜まっていた仕事を片付けるや、即椿の家に突撃していた。
「いや~、わかっちまうか!?そうなんだよそれなんだよ聞いてくれるか椿ぃ!」
「いえ、だから聞かなくても大体想像が」
「やっぱりな、あのヒトは綺麗だったなぁ~…」
「聞く気は、ないのね」
はぁ、とため息を一つつくと、椿は熱めに淹れたお茶を手に取った。
長くなりそうだ、と思ったからだ。
基本的に、燎の話は半分聞き流した方がわかりやすい、ということもある。
「あんな突然押しかけたのによ、嫌な顔一つせずに受け取ってくれたんだよなぁ。しかも、『帰りも気をつけて』なぁんて心配までしてくれてよ!いっやぁ~。あたいを心配してくれる奴なんざ最近とんっと見ねぇからよ、なんて返していいものか迷っちまったよ」
「私はわりと心配してるわよ、主に、あなたの将来を」
「お、ホントか椿!やっぱ優しいよなぁ椿は!」
何を言っても『お燎ふぃるたー』がかかってしまう性格は知っていたが、多少の疲れを覚えて椿はそっと視線を庭に逃がした。
何事も前向きにとらえるのは燎の良いところだが、時と場合によってはかなりの弊害を生む。
おそらくその『あのヒト』のこともかなりのフィルターがかかっているのだろうと、椿は椿なりに状況を想像してみることにした。
夫もテンションが高いので、こうい手合いは慣れているのだ。
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