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一刻後。
「つ、椿…これをあたいに持っていけってのか?」
美しい風呂敷に包まれた、手土産を前に燎は絶句していた。
形でわかる。
お酒だ。
立派な酒瓶が2瓶、中くらいの箱が一つと小さな箱のようなものがいくつか。
「持てるでしょ?」
さらっと言われた一言に、「あたいを男だとおもってやがんな!?」と息巻きながらも燎は大人しく荷物を持ち上げた。
わりと、軽々と。
「ほら、持てたじゃない」
「…そりゃまぁ、普段鉄扱ってんだ。こんくれぇ持てるけどよ」
「なら問題ないわね。お酒割らないように気をつけて頂戴ね。はい、行ってらっしゃい」
「う~…じゃぁ、行ってくらぁ」
「冬は寒いだろうから、これを着ていくのよ」
ふわり、と微笑みながらかけられたのは柔らかな素材のケープで、燎はその優しさに感動したのかいつもの勢いを取り戻した。
「椿ぃ…!よっしゃ、あたいは行ってくるぜ!!ありがとな椿!!」
「えぇ、行ってらっしゃい」
ありがとなー!!と、曲がり角を曲がって見えなくなるまで手を振り続ける燎を見送ると、椿はようやく静かになった境内へと一人戻っていくのだった。
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