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そして、先程連絡があり、本当に血液に異常が見られたそうだ。病名は小難しくて覚えていないが、ほっとけば死に至るものだったようだった。
(しかし、みんな健康だからこの能力、意味ないんだよなぁ)
自分の能力の使用用途を思い、残念に思ったのだった。
「いや~、亜希斗くんのお陰で利用者が伸び傾向だよぉ」
「ありがとうございます、神坂(みさか)さん」
バイトの終了―つまり、献血も終了だ。辺りは夕焼けでオレンジ色に染まり、バイト開始時の青空はオレンジ色に侵略されかけていた。
さて、今、彼がいるのは献血車の中だ。辺りには色々な器具があり、まるで病室がそのまま来た、というのがピッタリだ。
そして、その運転席の方―亜希斗はオフィス向きのキャスター付きの椅子に腰掛けた20代中盤の女性 神坂の前に立っている。
彼女は呑気そうな声を出しながら、電卓を打つため、手をせわしなくボタンが壊れそうなくらい動かしている。
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