1-夕暮れの出会い

4/13
前へ
/91ページ
次へ
「・・・何個目ですか」 「んー、3個目かなぁ?あ―給料の精算終わったよぉ」 「ありがとうございます」 給料の入った封筒を受け取る。心なしかちょっと厚い気がし、神坂に尋ねてみた。 「なんか太くないですか?」 「え!?太った!?」 神坂は目を丸くし、白衣の下のシャツを捲り上げた。現れる白い肌、見事に整ったウエストは太っているはずなどなかった。 「ち・が・う!封筒の方!」 亜希斗はそれに対し、キレ気味に封筒を叩き、アピールした。 「あ、そっち。ジュース代入れておいたからねぇ」 神坂はまた呑気な口調に戻り、ほっとしたような表情だった。 (なんだ、この人・・・。エスパーか?) バイト中、心の中で呟いたことが実現してドキリとした亜希斗だった。 「神坂さん、お腹仕舞ってください。冷えますよ」 「あー。失礼。いやあ、お恥ずかしい」 「恥ずかしいのはこっちですよ」 亜希斗と神坂の笑い声が車内に響き渡った。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加