さようなら

8/8
前へ
/8ページ
次へ
その時突然、病室の電気が切れた。 嫌な予感がした。死が、じりじりと歩み寄るような、そんな感覚がした。 「何!?」 「亜季が、来る」 智梨には分かっていた。復讐に失敗した彼女が、もう一度来ると…智梨には分かっていたのだ。 「早く逃げないと!」 看護婦が智梨をベッドから引きずり出した。肩に手を回し、病室から出ようとした。 「看護婦さん…ダメよ、あなたも死ぬわよ!」 「患者を置いて逃げ出すなんて、看護婦失格よ…だって、私は…看護婦ですもの」 しかし、病室のドアの前にさしかかった時、突然看護婦は倒れた。智梨もそれに巻きこまれて、ドアの前にうつ伏せに倒れた。 少し痛がった後、体を起こし、看護婦の背中に手をやった。 「大丈夫ですか…」 看護婦の背中は濡れていた。それが血だと気づいた時、頭上から寒気がした。 「亜季…」 智梨は一人では立てないため、血が滴る包丁を持った亜季を、ただ見つめるしかなかった。 「やめて…」 包丁が、天高く振り上げられた。 「さようなら」 完
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加