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その時突然、病室の電気が切れた。
嫌な予感がした。死が、じりじりと歩み寄るような、そんな感覚がした。
「何!?」
「亜季が、来る」
智梨には分かっていた。復讐に失敗した彼女が、もう一度来ると…智梨には分かっていたのだ。
「早く逃げないと!」
看護婦が智梨をベッドから引きずり出した。肩に手を回し、病室から出ようとした。
「看護婦さん…ダメよ、あなたも死ぬわよ!」
「患者を置いて逃げ出すなんて、看護婦失格よ…だって、私は…看護婦ですもの」
しかし、病室のドアの前にさしかかった時、突然看護婦は倒れた。智梨もそれに巻きこまれて、ドアの前にうつ伏せに倒れた。
少し痛がった後、体を起こし、看護婦の背中に手をやった。
「大丈夫ですか…」
看護婦の背中は濡れていた。それが血だと気づいた時、頭上から寒気がした。
「亜季…」
智梨は一人では立てないため、血が滴る包丁を持った亜季を、ただ見つめるしかなかった。
「やめて…」
包丁が、天高く振り上げられた。
「さようなら」
完
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