さようなら

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次の日、智梨は悪夢にうなされて飛び起きた。 自分がある女を殺す夢だった。その光景は、まさしく自分がされたことを、その女にしていた。距離を縮めて、女はフェンスの上に立ち、そして… 「さようなら」 どこかであの看護婦の声が聞こえた。声の方を見ると、看護婦が病室から出て行くお婆さんに手を振っていた。昨日まで同室だったお婆さんだった。 智梨は、お婆さんを見送り終わった看護婦に聞いた。 「今、なんて?」 看護婦はでこに皺を寄せ、何?と言わんばかりの表情を見せた。 「さようならって…ほら、菊池さん今日退院だから」 菊池さんとは、あのお婆さんの名だ。この病室には智梨とお婆さんだけだったため、病室前の名札を見ればその人の名前が分かった。 「さようなら…」 智梨が呟くと、またもや頭痛がした。昨日暴れた時と同じだった。記憶が蘇りつつある証拠だ。
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