さようなら

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「来ないで!」 熱い日差し、怯える女、包丁を持つ智梨。 智梨は女に歩み寄る。女はフェンスに背中をくっつけて、フェンスの下を覗いた後、その上に立ち、女は言う。 「必ず復讐する」と、智梨は返事を返すように、遙か下の地面で血を流している女に言った。 「さようなら」 そこで頭痛は治まった。 智梨はその記憶を疑った。気づくと智梨は額いっぱいに汗を浮かばせ、頭を両手で押さえていた。昨日みたく暴れてはいないが、看護婦が心配そうに智梨の顔を覗き込んだ。 「私が殺した…そうだ。私が殺されたんじゃない、私が殺したんだ!」 「大丈夫…大丈夫よ、あなたは誰も殺してなんかないし殺されてもいないわ、あなたは自殺したのよ」 「違う!どうして分かるの?どうして私があの女を……亜季…」 「やめてよ智梨!」 ふいに、記憶が戻り、智梨の頭の中に映像が流れた。 熱い日差し、ビルの上、智梨が包丁を持ちながら近寄っていたのは、友人の亜季だった。 「亜季、あなたが悪いのよ!!あなたが私の夫を奪ったのよ!!」 「違うわ!私とあの人は愛し合ってた、智梨がただ勘違いしただけじゃない!」 そこで亜季の背中がフェンスにくっついた。下を覗き込み、そして上に立つ。 「必ず復讐する」 そう言って亜季は死んでいった。智梨は言う。 「さようなら」  
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