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浦見でございます。
届いた手紙にはそう書かれていた。
「何?人名?何のこと?」
海野が言う。
「浦見っていうのは海を見ることだって。」
辞書を見ながら落合が言う。
「えっ俺?」
「いやお前は関係ない。」
「お前ら適当だな。もう少し考えて喋れよ。」
俺が言う。
「八頭さんて発言にセンスないっすよね。」
なんだ発言のセンスって?
今朝届いたその手紙にはそれだけしか書かれていなかった。
どうしたものか。
「どうしますこれ?燃やします?」
「せっかく届いたのに。」
「せっかくって…。ていうか誰宛にきたのよ?」
海野は適当な発言が多いと思う。
落合が答える。
「誰っていうか、ここ宛ですね。」
「送り主は?」
「書いてないです。」
ここはとある田舎の交番。
良く言えば平和でのどか、悪く言えば何もなくて退屈な町にある。
平和・退屈・交番をキーワードに検索したら、おそらくここが割り出されるのではないか。
冗談である。
さておき。
「気味悪いな。送り間違いでもないのか。とりあえず保留。燃やすなよ。」
「八頭さん、そうやって困ったこと後回しにばっかり。」
「海野うるさい。」
事実だ。弁解の余地もない。
「もう手紙は明日にしましょうよ。電気消しますからとっとと出てってください。俺が迷惑してます。」
「うるさい落合のくせに。」
「うるさい落合のくせに。」
「くせにの意味が分かりません。」
たぶん気にすべき点はそこじゃない。
こうやって有耶無耶のままに帰った。もっと真面目に考えるべきだったのに。
俺たちの頭は平和ボケに蝕まれていた。
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