いち

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浦見でございます。 届いた手紙にはそう書かれていた。 「何?人名?何のこと?」 海野が言う。 「浦見っていうのは海を見ることだって。」 辞書を見ながら落合が言う。 「えっ俺?」 「いやお前は関係ない。」 「お前ら適当だな。もう少し考えて喋れよ。」 俺が言う。 「八頭さんて発言にセンスないっすよね。」 なんだ発言のセンスって? 今朝届いたその手紙にはそれだけしか書かれていなかった。 どうしたものか。 「どうしますこれ?燃やします?」 「せっかく届いたのに。」 「せっかくって…。ていうか誰宛にきたのよ?」 海野は適当な発言が多いと思う。 落合が答える。 「誰っていうか、ここ宛ですね。」 「送り主は?」 「書いてないです。」 ここはとある田舎の交番。 良く言えば平和でのどか、悪く言えば何もなくて退屈な町にある。 平和・退屈・交番をキーワードに検索したら、おそらくここが割り出されるのではないか。 冗談である。 さておき。 「気味悪いな。送り間違いでもないのか。とりあえず保留。燃やすなよ。」 「八頭さん、そうやって困ったこと後回しにばっかり。」 「海野うるさい。」 事実だ。弁解の余地もない。 「もう手紙は明日にしましょうよ。電気消しますからとっとと出てってください。俺が迷惑してます。」 「うるさい落合のくせに。」 「うるさい落合のくせに。」 「くせにの意味が分かりません。」 たぶん気にすべき点はそこじゃない。 こうやって有耶無耶のままに帰った。もっと真面目に考えるべきだったのに。 俺たちの頭は平和ボケに蝕まれていた。
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