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『――…やだなあ、なんで会うんだよ』
「…Ha!それはこっちのセリフだぜ、クソ妹」
――ずきん
『あはは、誰がアンタの妹だよ。戯言も大概にしろっての』
「言葉のあやだろーが」
――ずきん
『ふぅん?言葉のあや、なんて良く知ってたねぇ。わーすごい』
「棒読みじゃねぇか。てめぇはとことん気に喰わねぇ」
――ずきん
ああ、とまれよ。
なんで今更痛むんだ。
私は、ここで伊達政宗に――兄さんに殺されて、初めて役目が終えられるんだろう?
喜ばしいことだろう?
ちゃんと、兄さんの役にたてるんだろう?
なんのために今まで散々嫌っているように見せてきたんだ。
――兄さんの憎悪くらい、受けとめられないわけないだろう?
嗤う、哂う、わらう。
自分を嘲笑ってみるけれど、そうすれば、案外単純な兄さんは自分に向けられたものだと勘違いしてすぐに引っ掛かる。
煽って煽って、一歩ずつ近づく死すらも笑って受け入れよう。
それが、罪深い私のせめてもの償いだ。
『さて、話していても仕方がないし何よりこれ以上アンタと話していたくはないしね』
嘘、ウソ。
ほんとはもっと話していたい。
もっともっと、兄妹らしくいたかった。
それももう、叶わないけれど。
すらりと、腰に差していた刀を引き抜く。
銀に光るソレは、照りつける太陽の光を反射して鈍くきらりと煌めいた。
その切っ先を、兄さんへと向ける。
『ほら、構えなよ。アンタは私が殺してあげる』
「てめぇに殺されるほど弱くねぇよ」
ぎろりと、いつもの余裕そうな笑みすら浮かべることなく睨む鋭い目。
そう、それでいい。
それでこそ、伊達家を背負っていく者の目だ。
すっと向けられた切っ先に、目を細めた。
「お前を殺すのは俺だ」
『…やれるものなら?』
挑発するように呟いて、ニヤリと嗤ってみせる。
そして、同時に地を蹴った――。
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