叫ぶ言葉は

3/3

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
『っがは、』 ごぽり 結果的に言うと、私は負けた。 兄さんの刀は、綺麗に私の脇腹を貫いた。 喉の奥からせりあがってくる血に、思わず笑った。 「…この状態で笑うなんざ、本当にcrazyな奴だ」 『――なあ伊達政宗。悪いことを教えて、やるよ』 さあ神様、ここからが正念場だぜ? 頼むから、途中で私の生を止めるなんて野暮な真似はやめてくれよ? 「悪いことだと?」 『そう。アンタにとっちゃ、一番嬉しくないこと、だよ』 息をするのも、言葉を零すのも辛くなってきた。 限界はとうに越えている。 あとは、私の気力がどこまでもつかだ。 『よーく、聞けよ?クソ兄貴』 「!お前、今――」 『わたしは、』 何か言いたげな兄さんの言葉を遮る。 今は一分一秒でも惜しいんだ。 薄く笑みを浮かべて、必死の笑顔で囁いた。 『わたしは、アンタのこと、きらいじゃなかったよ』 ああ、言えた。 私が作った道筋の、最後の最後を変更なんて、するつもりなかったんだけどなあ。 こんなこと、言うつもりなかったんだけどなあ。 わたしは、たいがい、よくぶかいって、こと、かあ… ゆっくりと閉じていく瞼に、もう抵抗する気なんて起きなかった。 ――なあ兄さん。もしまた会えるなら、今度は普通の兄妹として会いたいな。 お互いが嫌いあうことのない、普通の、普通の兄妹として。 「っおい!ふざけんな、言い逃げなんざ許すわけ________!!」 兄さんが何か叫んでいるけど、もう何も聞こえなかった。 さよなら世界、おやすみ私。 そのままゆっくりと、私は奈落に落ちていった――。 叫ぶ言葉は もう少しも聞こえない .
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加