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『っがは、』
ごぽり
結果的に言うと、私は負けた。
兄さんの刀は、綺麗に私の脇腹を貫いた。
喉の奥からせりあがってくる血に、思わず笑った。
「…この状態で笑うなんざ、本当にcrazyな奴だ」
『――なあ伊達政宗。悪いことを教えて、やるよ』
さあ神様、ここからが正念場だぜ?
頼むから、途中で私の生を止めるなんて野暮な真似はやめてくれよ?
「悪いことだと?」
『そう。アンタにとっちゃ、一番嬉しくないこと、だよ』
息をするのも、言葉を零すのも辛くなってきた。
限界はとうに越えている。
あとは、私の気力がどこまでもつかだ。
『よーく、聞けよ?クソ兄貴』
「!お前、今――」
『わたしは、』
何か言いたげな兄さんの言葉を遮る。
今は一分一秒でも惜しいんだ。
薄く笑みを浮かべて、必死の笑顔で囁いた。
『わたしは、アンタのこと、きらいじゃなかったよ』
ああ、言えた。
私が作った道筋の、最後の最後を変更なんて、するつもりなかったんだけどなあ。
こんなこと、言うつもりなかったんだけどなあ。
わたしは、たいがい、よくぶかいって、こと、かあ…
ゆっくりと閉じていく瞼に、もう抵抗する気なんて起きなかった。
――なあ兄さん。もしまた会えるなら、今度は普通の兄妹として会いたいな。
お互いが嫌いあうことのない、普通の、普通の兄妹として。
「っおい!ふざけんな、言い逃げなんざ許すわけ________!!」
兄さんが何か叫んでいるけど、もう何も聞こえなかった。
さよなら世界、おやすみ私。
そのままゆっくりと、私は奈落に落ちていった――。
叫ぶ言葉は
もう少しも聞こえない
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