魔界へ行こう

28/28
前へ
/228ページ
次へ
だけど、ルウはお腹を抱えて笑い出した。 「あはははは!何を言い出すかと思ったら!」 ライはそんなルウの様子を真顔で見つめていた。 「人間を妃にする?あはははは!そんなことができるはずないだろう?まったく笑わせてくれるよ、この兄上様は。」 「勝手にほざいていろ。」 「もし仮にそんなことができたとしても、お前は一族の恥さらしだ、ライ。」 「お前には関係のないことだと言っている。」 ライとルウの間に、バチバチと火花が散っているようだった。 「せいぜいその人間と恋愛ごっこでもしてるがいいさ!その方が僕も助かるからね。王位を継承するのは、この僕だ。」 そう言って、ルウはマントを広げ、体を包み込んだ。 「じゃあね、兄上様。」 ルウはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、一瞬にしてその場から消え去った。 「ふん。つくづく腹のたつ弟だ。」 ライはため息をついた。 ピンと張りつめていた糸が切れた気がして、あたしはその場にへなへなとしゃがみこんでしまった。 「菜乃香?どうした?」 「なんか…色々あったから…」 「そうだな。」 ライは屈みこんで、あたしの頭を優しく撫でた。 魔界。 さっき、魔界は人間の世界と似ているって思ったけど。 前言撤回だ。 魔界って、やっぱり恐ろしい!! あたしはどうやら、来てはいけないところに来てしまったみたいです。 ライの妃になるなんて、やっぱり絶対に無理だと、再認識した。 あたし、いったいこの先どうなっちゃうのー!?
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1190人が本棚に入れています
本棚に追加