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ところが。
「グレン。どうした?」
ライはそう言って、なんのためらいもなく虎に近寄った。
!?
「ライ様。」
猛獣が喋った。
な、なんなの!?
この猛獣、ライのこと「ライ様」って…
猛獣はライが目の前に来ると、静かに羽をたたんだ。
そして。
「ライ様。殿下がお呼びです。」
とても丁寧な言葉遣いで、ライに頭を下げた。
「父上が?」
「はい。今すぐ城に来るようにと。」
「わかった。すぐ行く。」
「それと…」
猛獣が顔を上げ、あたしの方を向いた。
金色の大きな目玉に見つめられて、あたしは硬直する。
「その娘も一緒に連れてくるようにと、おっしゃっておりました。」
え…?
「わかっている。ご苦労だったな。」
「では、失礼いたします。」
そう言って、猛獣は再び羽を広げると、空高く舞い上がった。
砂煙が上がる。
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