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…………
もう空は暗くなっていた。
ライはあたしを抱えたまま飛行している。
「ライのお城って遠いの?」
「ああ。でも、もう少しで着く。」
風を切ってライは飛ぶ。
眼下には森が広がっていた。
夜だから一面真っ黒に見える。
さっきまであたしたちがいた街の明かりが、遥か遠くに見えた。
月と星の光だけが辺りを照らす。
ライの首に架かるブラックスカルのネックレスが揺れていた。
ライ…
あたし、ライに誘われるがまま魔界に来ちゃったけど、やっぱりここへ来ない方がよかったんじゃないの?
あたしは、妃になるとか、魔界を統べるとか、そんなことに興味があるんじゃないよ。
あたしはただ…
ライのことが好きで…
その後は、ライの真剣な顔を見たら言えなかった。
ライは王様になることを望んでいるんだもんね。
あたしの思いは、今はそっと心の中にしまっておこう。
あたしはライの胸に顔を埋めた。
「どうした?寒いか?」
「ううん、なんでもない。」
ライの匂いがする。
甘い匂い。
お城に行ったら、なにか大変なことが起こりそうで…。
そんな予感がして、あたしはこのままライから離れたくないって、そう思った。
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