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「こんな人間の女を相手にしてるなんて時間の無駄よ、ライ!早く私と一緒に魔界へ帰りましょうよ!」
「お前に指図される筋合いはない。」
さっきから相手にしてくれないライを見て、アクアはほっぺたを風船みたいに膨らませた。
「ライのばかぁ!でも諦めないんだからね!この私が人間の女なんかに負けるわけがないもん!」
そう言ってアクアがさらにあたしに詰め寄った。
綺麗なブルーの瞳と豊満な胸が目の前にくる。
「菜乃香!!ライは私のものですからね!絶対に渡さない!覚悟しときなさいよぉーっだ!」
耳がキーンとした。
アクアは言い捨てると、またライの腕に絡み付いた。
「それじゃあライ、私バイオリンのお稽古があるから魔界に帰るね!愛してるよ!…チュッ」
ちょ…!
アクアはライの頬にキスをしてから、マントで身を包み…一瞬にしてその場から姿を消した。
………
しん、と静まり返る部屋。
ライとあたしの2人だけ。時計の音だけがカチカチと聞こえた。
あ、嵐が去ったああぁ……
あたしは一気に肩の力が抜けた。
「アクアちゃん、めちゃくちゃライのこと好きなんだね。」
と、あたしが言うと。
「まったく、騒がしい奴だ。」
ライは呆れたようにため息をついた。
だけど。
その表情に、あたしの心臓がズキッと痛んだ。
騒がしい幼なじみに呆れながらも、それを許して優しく微笑むライの表情。
………
あたしの知らないライがいた。
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