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「もうすぐ誓いの儀だな」って、真剣な目をして話すライに対して、あたしは自分の本当の気持ちを未だ伝えられずにいた。
あたしの気持ち。
ライが好き。
ずっと一緒にいたい。
だけど。
あたしは魔界へは行けない。
あたしを育ててくれたママを1人、こっちに残して行くことはできない。
胸が苦しかった。
「誓いの儀」という言葉を聞くことも、ライの真剣な顔を見ることも。
考えるたび、涙がこぼれそうになる。
だから、最近のあたしは元気が出ない。
今日も、学校でみーちゃんに「大丈夫?」って心配されちゃった。
―――…
あたしは、日が沈んで少し黒ずんだ空を見上げて、はあ、とため息をついた。
帰り道、川沿いの土手を真っ直ぐ歩く。
橋が見えてくる。この橋を渡ればあたしの家はもうすぐ。
橋に差し掛かったあたしは、ふと、ライに初めて出会った夜を思い出した。
あの日は夏目先輩との事件があって、あたしは泣き腫らした目でぼーっと川を見ていたっけ。
銀色の妖しい光を放つ満月を背に、静かに橋の上に降り立ったライの姿を、今でもはっきり覚えてる。
「はあ…」
あたしは橋を渡りながら、また1つため息をつく。
すると。
橋の真ん中に、何やら黒い人影が見えた。
…?
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