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ルウは相手の女性に向かって優しく微笑んだ。
「ごめんね、今日はここまでだよ。さあ、僕のことは忘れて、君はお家にお帰り。」
ルウがそう言うと、女性は「はい」と返事して、目をうつろにさせたまま、ぼーっと歩き出した。
ルウは女性の姿が見えなくなると、くるりとあたしのほうに顔を向けた。
口元は笑っているけど、目は笑っていなかった。
「君、菜乃香ちゃんだよね。久しぶり。この近くに住んでるんだね。おかげで僕、血を吸い損ねちゃったんだけど…どうしてくれるのかな?」
こ、怖いよおおおおおおお!
金色からエメラルドグリーンに戻ったルウの瞳がぎらりと光る。
「ごごごごめんなさい…」
「謝って済む問題じゃないよ?」
体が動かない。
「代わりに、君の血を吸わせてくれたら帰してあげてもいいよ。」
ルウが徐々にあたしに迫る。
いやだ…
ルウの動きに合わせて、あたしはゆっくりと後退りする。
でも、ここは橋の上。
迫られて橋の縁まで来てしまい、もう逃げ場がない。下には川が流れてる。
絶体絶命。
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