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“あの光1つ1つのもとには、生き物がいる。”
鼓膜を震わす、綺麗な低音。
あたしの、大好きな人の声。
“菜乃香が菜乃香であるように、俺は俺だ。”
ライ…。
夏の夜、ライがあたしを抱えて空を飛び、眼下一面に広がる夜景を見せてくれた。
あのときも、今と同じように、色とりどりの光たちが目に飛び込んできたっけ。
「菜乃香ちゃん?」
夏目先輩の声で、我に返る。
「あ、ごめんなさい!ぼーっとしちゃいました。」
思い出しちゃ、いけない。
忘れるって、決めた。
「菜乃香ちゃん、俺さ…」
先輩が一歩、あたしに近寄った。
「俺、菜乃香ちゃんが告白してくれた日、あんなひどいことをしてしまったこと、今でもすごい後悔してるんだ。」
先輩の目は真剣だった。
「菜乃香ちゃんを傷付けておいて、こんなこと言う資格なんてないのかもしれないけど、だんだんと、菜乃香ちゃんに引かれていく自分がいて…」
あ…
これって、もしかして…
「今度は俺から言うよ。菜乃香ちゃんが好きなんだ。よかったら、俺と付き合ってほしい。」
光の粒がガラス越しに揺れていた。
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