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「あたし、もう帰りますから。」
変な人には関わらない方がいいよね。
あたしはくるりと方向転換して、少し早足で家へと向かおうとした。
「待て。」
耳のすぐ横で声がした。
驚いたあたしは、咄嗟に後ろを振り返る。
「まだ用は済んでいない。」
はい?
男性は、さらに顔を近づけた。
「お前、いい匂いがするな。」
な…!
何言ってるのこの人!
「少し香ばしくて甘い…血液の香りだ。」
え…?
「こんな匂いのする人間は初めてだ。今日は運がいいかもしれない。」
あたしは男性の目を見て、一気に背筋が凍りつく感覚を覚えた。
さっきまで赤い色だった瞳は、透き通るような金色に変化していた。
「今から、お前の血をいただく。」
次の瞬間。
唇に柔らかいものが当たった。
「ん…!」
これ…
これって、キス!?
噛みつくような激しいキス。
あまりにも突然の出来事に、心臓がズキズキ痛んだ。
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