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あたしは、ちょうど来たエレベーターに乗り込んで、ビルを出た。
人で溢れ返る街を走る。
周りの景色は見えない。
光が、音が、人が、あたしの横を通りすぎていく。
風がビュービューと頬に当たる。
ライ。
あたしはやっぱりあんたが好き。
ライのことを考えて、あたしは走った。
ただただ、走り続けた。
――――…
気づけば、家の近くの橋の上まで来ていた。
はあ、はあ、と息が切れる。
息を吐くたび、白い煙が口から漏れる。
賑やかな街から外れ、辺りはしーんと静まり返っていた。
ライ…
この橋の上は、あたしにとってすごく大切な場所だよ。
だって、ライと初めて出会った場所だから。
白い息が、暗闇に溶ける。
ふと、あたしは空を見上げた。
あ…
瞬間、涙が溢れた。
うそ…
あたし、バカだ。
今日が満月だったってことも知らなかったなんて。
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