真夏の夜の×××

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「で?この動く箱はなんだ?」 ガタンガタン… ガタンゴトン… 只今、電車の中。 みーちゃんからの電話を終えた後、ライが「今日お前が行くはずだった所に行きたい」って言うから、渋谷に向かってる途中。 「これは電車。人はこれに乗って移動するの。魔界には電車みたいな乗り物ないの?」 「魔界のヴァンパイアや魔女は空を飛ぶことができるから、そんなもの必要ない。」 なるほど。 それにしても、さっきから人の視線が気になるんですが… 車内にいる人は、明らかにライをじろじろと見ていた。 それもそのはず。 長身。イケメン。 それは言うまでもないけど、全身黒づくめで、マントを羽織っていて。 おまけに腰には存在感MAXのシルバーアクセサリー。 そんなライの姿は、ものすごーく目立つ。 「見るな」と言う方が無理な話だよね。 だけど、当の本人は、そんな視線など全く気にも留めず、車内をきょろきょろと観察している。 「菜乃香、これはなんだ?」 「え?それはつり革。」 「これは?」 「電光掲示板。」 「これは?」 「網棚……って、ちょっとは静かにしててよね!」 恥ずかしい! ライは物珍しげに、つり革をつついて遊んでる。 まったくもう。 でも、いちいち反応するライが、なんだか子どもみたいで、ちょっとだけかわいく見えた。
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