真夏の夜の×××

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「菜乃香、顔がにやついてるぞ。」 「えっ?そうかな?あはははは…」 ゲームセンターを出て、道を歩きながら、あたしはさっき撮影したプリクラを眺めていた。 マントを取ったライの姿が写ってるプリ。 ライの紅い瞳はちょっと不気味だけど、ほんとにデートしてるカップルみたい。 道行く人がライをちらちら見る。 女の子たちがふり返る。 スカウトマンが名刺を渡す。 ライって、やっぱり相当かっこいいいんだなあ。改めて実感。 この後、あたしはみーちゃんと行くはずだったお店に行って、服をたくさん買った。 昨日ママが「お買いもの楽しんでおいで」って言ってくれたからって、ちょっと色々買いすぎたかも。 ショップバッグ、いっぱいになっちゃた。 そしたらライってば。 「貸せ。持ってやる。」 って。 ほら、ずるい。またあたしばっかりドキドキする。 心臓がしめつけられる。 ライは、どうしてヴァンパイアなの? また、そう思ってしまう。 ライとの距離が近くなるたび、そう思ってしまう。 ライはあたしを「妃にする」と言ってくれた。 だけど、それは無理だよ、ライ。 あたしは人間。住む世界が違う。 ライとは生きる世界が違う。 いつかあたしが死んでも、その先ライはずっと生きるでしょ? ライは自分のいるべき世界で幸せになった方がいい。 「菜乃香?」 ふいに、ライに呼ばれて顔を上げた。 「なぜ泣いている。」 うそ… 知らないうちに涙が。
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