真夏の夜の×××

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あとからあとから涙はこぼれ落ちる。 ライはそんなあたしを黙って見つめていた。 気づけば、知らないうちに空は暗くなっていた。 街は明かりに満ちる。 にぎやかで楽しい街の光は、涙でぼやける。 ライがあたしの手を取った。 「来い。」 ライは人で溢れる大通りを外れて、脇道に入った。 どんどん先へ進んでいく。 手を引っ張られているあたしは、その速さに追いつけず、駆け足になってしまう。 「ライ?ねえ、ライってば!どこ行く気?」 あたしの問いかけにライは答えない。 ただ何も言わず前に進み続ける。 しばらく行くと、ひと気のない住宅地に来た。 「ちょ、ちょっと、ライ?どうしたの、急に。」 「なぜ泣いていた?」 あ… 「えっと、その…」 言えない…。 「ん?」 ライの顔を見ると、少し悲しそうな表情をしていた。 心配してくれてるんだ。 「なんでもないよ。」 「なんでもなくて涙が出るのか?」 「それは…」 「言いたくないならべつにこれ以上聞かないが…」 そう言って、ライは身を屈めた。 まぶたに優しいキスが降る。 「お前に涙は似合わない。」 ライの大きくて綺麗な手が、あたしの頭を撫でた。
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