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リビングに行くと、皆、席に着いていた。
いつの間にか父も帰っていた。
「父さんお帰り。今日は早かったんだね」
と言い、俺は席に着いた。
「ああ、今日は定時にあがれたからな。なるべく家族皆で揃って食事をしたいから、真っ直ぐ帰ってきたんだよ」
母が全ての料理をテーブルに揃え終え、いただきますと皆で言い、食事を始めた。
しばらく沈黙で食事をしていると母が、
「貴之。あなた、お父さんに話があるんでしょう?」
…ここで、言うのか。皆の前で言うと必ず妹どもがチャチャを入れるから、後で話そうかと思っていたのだが、しょうがない。
「父さん、実は大晦日から2泊3日で、彼女とスキー旅行に行こうと思ってるんだ。いいよね?」
父は少し考え、
「まぁ、いいか。家族で年を越したかったが、お前もたまには遊びたいだろう。気を付けて行ってきなさい」
「ありがとう、父さん」
そう言うと、上の妹である美奈が、
「で、どうだったの?さっき部屋から電話してたみたいだけど、予約してたんでしょ?ダブルは取れたの?(笑)」
……
「取らなかったよ」
プッと美奈が笑い、
「取らなかった?『取れなかった』の間違いでしょ?(笑)」
……いちいち余計な事を。
俺は、無視した。
………だ?
えっ?
聞く耳持たないよう、食事に集中してたせいか、父がなんて言ったかわからなかった。
「場所は何処に行くんだ?」
「ああ。北海道だよ。優香が行きたいペンションがあるらしくてね。『ペンション鷹』ってとこ」
そう言うと、
急に、父が目を大きくした。
そして、
「あのペンション、まだあるのか!」
そう言った父の声は、怒鳴り声にも聞こえた。
「どうしたの?急に。『ペンション鷹』がどうかした?」
そう聞くと、父は話を始めた……
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