5年前の事件

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「もう5年は経つか」 俺は、父の話をしばらく聞いていた。 その話には俺も驚いた。 その話の内容はこんな感じだった。 今から5年前に北海道の『ペンション鷹』で、ある殺人事件が起きたらしい。 しかし、俺が予約したペンションの場所はK市で、事件があった『ペンション鷹』はJ市だった。 ……偶然だろうか? そして、その事件の内容は、ペンションを経営している夫婦がいて、妻の方が両目をくりぬかれた状態で、ペンションの側の地面から死体で発見されたらしい。 当然、夫である、高田信男が容疑者としてあがった。 しかし、信男は容疑者の枠から外された。 アリバイが成立したのである。 妻、幹枝が殺された時間、信男は、数十km離れた馴染みのバーで飲んでいる所を、マスターと、そこにいた客が証言した。 幹枝には多額の保険金がかかっていた。 それで警察は保険金欲しさに、妻の幹枝を何らかの方法で殺した後に埋めたのだろうと、その線で捜査していたが、アリバイが成立してしまった為に、事件は振りだしに戻ってしまった。 結局、今でも犯人は捕まっておらず、信男に多額の保険金が入った。 ………まさか。いや、たまたま同じ名前のペンションだろう。 しかし、それだけ知れた事件と同じ名前を使うだろうか? もしかしたら、さっき出た電話の声の主が夫の信男なんだろうか? 俺は、ボ~っと宙を見て考えていた。 すると、母が喋りだす。 「場所も違うし、それに5年前の話よ?関係ないでしょう?」 父は、 「そうかも知れないが、既にそのペンションは壊されたらしい。もしかすると、貴之が行くペンションが、新しく始めたペンションかもしれない。 ……別に泊まるとこは何処でもいいだろう?今から変更したらどうだ?」 ……俺は考える。 事件と同じペンションの名前を使えば、客もペンションの名前を見たら事件を思い出すだろう。 …5年前。 そんなに昔の事でもない。覚えてる人は沢山いるのではないだろうか? しかし、電話をかけた感じでは、予約もいっぱいで人気もあるみたいだ。優香も言っていた。 やはり、偶然だろう。 それに、犯人は捕まっていないらしいが、たった2、3日で何が起こるという事もないだろう。 俺は答えた。 「大丈夫だよ」
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