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【6月7日(月)午後11時53分】
それは、脈を打つように絶えず力強く動いていた。漆黒の夜空に、紫紺に血の色を混ぜ合わせた極彩色で輝く欠けた月が昇っていた。
かつて、この様な月が空に昇ったことがあっただろうか?
街を歩く人たちが、この月の輝きに気づくことはなかった。
すでに寝ている人たち――部屋で電話をかけている人、TVゲームをしている人、明日、提出しなければならない課題のために、机に向かい必死に勉強をしている人たちも同じだった。
妖艶な月は、人々を破滅へと導く路標のようだった。
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