―序章―6/7[mon]pm11:53

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【6月8日(火)午前11時55分】 智久はリビングにあるソファーの上で横になっていた。額に腕を乗せ、目を閉じる。何も考えない。それが一番楽で、気が休まった。 窓を全開にして、楓爽と吹き抜ける初夏の風邪を体全体で感じ、穏やかな時間を過ごしていた。 正午に、政府が声明を発表するというニュースを思い出した智久は、動向が気になりテレビのスイッチを入れた。 画面には、内閣官房長官の広瀬敏也(ヒロセトシヤ)が映し出された。広瀬はまだ40代の前半だった。前任者の辞任を受け急遽、官房長官に抜擢されたが、冷酷で無慈悲だという噂もあり、任命される際には官邸内で多くの批判があったようだ。 担当は危機管理。国の安全に関わる事項、及び国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急事態への対応に関連する重要施策などの企画及び立案、並びに総合調整を行っている。 「これから私が言うことを落ち着いて聞いて下さい。今、日本がある脅幾にさらされている可能性があります」 テレビ局や新聞社の記者、カメラマンなど、会見場にいる人たちがざわつく。広瀬は、目の前の台の上にある原稿に視線を落とした。
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