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怒鳴り散らす広瀬を、秘書官たちは無言で追った。
会見が始まる3時間ほど前の午前9時、広瀬は首相な執務室に呼び出された。
「広瀬君、会見での発表は、この原稿通りにやってくれ」
じっと原稿に目を通していた広瀬が、首相の言葉に怪訝そうな顔を上げた。
「首相、どういうことでしょうか?あの馬鹿げた命令に従う、ということですか?」
「君は言われた通りにやればいいんだよ。余計なことは知らなくていい」 「この国で、一体何が起きているんですか?すべてを国民に伝えるべきではないでしょうか!?」 「もちろん、全力で国民を救うために方策を練っている。用件は以上だ」 首相はそれだけを言うと、立ち尽くす広瀬を残して執務室から出て行った。
智久と同じ様に、あんぐりと口を開け、今、画面内で言われたことを信じられない思いでいる人たちが多くいた。
――なんなんだ、これは。信じられない。
――冗談だろ。
日本中が困惑した。これからどうなるのか、不安に包まれた。
広瀬の発表を聞いた人たちが、かつてない不安と恐怖を覚えたのは言うまでもない。なかでも、命令の対象に該当する、広島県民、とくに高校生の反応は別格だった。
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