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『俺たちは全員、新幹線に乗るそうだ!智久も来い!テレビを見たんだろ?絶対にただ事じゃない』
「俺は遠慮しとく」
『どうしてだよ!?――悲劇の主人公気取りか?父親を殺された俺の気持ちなんて、誰も分かりはしない、とか思ってるんだろ!悲しんでれば、誰かが慰めてくれるとか!』
「思ってない!!」
『以前のお前に戻れよ!いつまで、くよくよしてんだよ!』
「うるせぇよ!」
しばらくの間、沈黙が流れた。修一がその沈黙を破る。
『悪かった。俺が言いすぎた。俺たちは1時すぎの新幹線に乗る。智久も必ず来い。友香もそれに乗る』
「……あぁ分かった。行くよ」
『待ってるから、必ず来いよ』
電話を切った智久は、ソファーの上に横になると、息を大きく吐いた。
――そんなんじゃねぇよ、修一。俺だって、以前の俺に戻りてぇよ。
智久自身も、以前の明るくて陽気な自分に戻りたいと願っていた。部屋という殻にこもり続ける自分自身に、嫌気が差していた。
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