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口論は、やがて取っ組み合いの喧嘩に変わった。片方が相手の顔を殴り、よろけたところを突き飛ばした。突き飛ばされたほうは、周りにいた高校生に寄り掛かるようにして倒れた。
周りにいた高校生たちが次々と転倒していく。ドミノ倒しのようだ。
その波は、ホームの端まで広がった。そして、端っこに立っていた男子2名と、女子3名が線路に落ちた。
「誰か、落ちた奴らを急いで助け出せ!!」
「う、嘘だろ……」
「行くな!二次災害を引き起こす!!」
「駅員に新幹線を止めるように知らせろ!」
「行くなぁあああーッ!!」
方々で大声と悲鳴が上がり、ホームに緊張が走る。
線路に落ちた5人のうち、4人は頭や足、腰を押さえていた。残りの1人――女子は、額からおびただしい量の血を流している。意識を失っているのだろうか、動かない。
落ちた5人のほうに、新幹線が容赦なく近づいていく。警笛と急ブレーキの音が耳をつんざく。
普段なら、だれかがホームに落ちても手前で止まることができただろう。しかし、通常より車両の編成を増やしたことにより重量を増し、制動距離も長くなっていた、さらに、臨時運行によるダイヤルの乱れ、経験したことがない非常事態による焦りがあった。
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