第一章命令①

13/66
前へ
/93ページ
次へ
「きゃぁあああああ!」 「中継、放送をやめろ!!放送できない!」 新幹線がもう一度、警笛を鳴らした。戦袗が走る。騒然とするホーム。落ちた高校生たちのところまで、残り10メートル。 通路に移動させようと、男子は意識のない女子を抱えて、立ち上がろうとした。しかし、飛び降りた際に足を挫いたのか、踏ん張りが利かずによろめく。 前方には、放心状態で地面に片膝をついている小柄な女子。 もう助からないと悟ったのだろうか。悲鳴を上げることもなく、ボーッと遠くを見つめている。 「……私は死ぬの?」 次の瞬間――。 ぐちゃ。 新幹線の車輪が、彼女を巻き込んだ。車輪の下敷きになって、骨を砕かれ肉を引き裂かれる。鮮血が四方八方に飛び散り、体は真っ二つになった。 新幹線の車体がほんの少しだけ浮いた。それでも、勢いは止まらなかった。 男子は近づいてくる新幹線を睨んで、奥歯を噛んだ。気を失っている女子を見捨てれば、まだぎりぎりで逃げられそうだった。 「あぁああああーッ!見捨てることなんて――」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

868人が本棚に入れています
本棚に追加