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――ごん。
金属製のハンマーでコンクリートを叩きつけたような音が、辺りに響いた。やけに耳に残る音だった。男子の顔面に、新幹線の車体が激突した。彼は仰向けになって倒れた。
線路にいた高校生は、意識を失っていた女子を除いて全員、新幹線に轢き殺された。
彼女は、奇跡的に体が車体と線路の隙間に入り込んだおかげで助かった。しかし、助けようとして飛び降りた男子の血を全身に浴びていた。
山陽新幹線は、人身事故により運行を一時見合わせる、と発表した。
この事故によって、事態は一変した。
広島駅の中継を東京都内で見ていた少女が、笑った。
「バカな男が1人死んだ。あなたは天国に行く?それとも地獄?――面白い。何なの、これは。武者震いしそう欲情しそう。もっともっと、死ねばいいのに――私はある人の信者。あなたの意思と意識は私が引き継ぎます」
ほぼ真上に昇っている太陽が分厚い雲に隠れ、広島市内が急に薄暗くなった。不隠な事態の訪れを予感させるかのようだった。
広島駅構内での人身事故を知らない智久は同じ頃、部屋で悠長に新聞を読んでいた。そして新聞を折り畳んで立ち上がろうとしたとき、インターホンが鳴った。
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