―序章―6/7[mon]pm11:53

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高層マンションに住んでいる住民の多くは隣人の顔さえ知らない。 近所付き合いはまったくと言っていいほどにない。エントランスホールやエレベーターで顔を合わせても、挨拶はない。人との繋がりを持とうとしない。 繋がるのが面倒だから、自然と拒絶しているのだろうか? それとも、干渉されたくないのか? 住民同士は、街中ですれ違う人たちのような関係だ。誰かが亡くなっても、悲しむことはないだろう。完全な他人だ。それ以前に、亡くなったことに気づくこともないかもしれない。 極端な話、住民が誰かに殺害されたとしても――気づくのは夕方のニュースかもしれない。 エントランスの自動ドアと、マンションを囲む塀に、何枚ものビラが貼ってある。 【冷酷人間!アンテナの代金と工賃を払え!高級マンションに住んでるお前らなら、金はたんまり持ってるだろ!払え!】 その高層マンションのせいで、この付近の住宅は、地デジ対応のアンテナを設置しないとテレビの映りが悪い状態になっていた。 その問題は、住民たちの間にトラブルを生んだ。 マンションの住民たちは゛自分たちには関係ない、払う義務はない。余計な出費をしたくない゛の一点張り。一方で付近の住民たちは、アンテナ代と工賃を払えと主張していた。意見は平行線のままだった。
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