868人が本棚に入れています
本棚に追加
1人の少女が眉を細めてニュースサイトを見つめていた。彼女はニュースの内容を一字一句メモし、さらに携帯で何か調べている。
――この2人の高校生の名前が知りたい。見えないところで、人々を蝕む、今は誰も知るよしはない何かが着々と進行している。一体、何が起こっているの!
少女が携帯のボタンを押す指の動きが速くなる。意味深そうな笑みを浮かべて、唇をさざ波のように揺らした。嵐の前のさざ波。それは時間の経過とともに巨大化して砂浜を呑み込み、打ち上げられた海草やゴミを海に呑み込む。そして、浜辺を本来あるべき、奇麗な砂浜に戻す。
少女は、自分の手の甲にキスをした。それは自分に向けたキスではない。ある人に向けた、慈愛のキスだ。
――私は私。私はあなた。あなたは私。2つの線が1つに交わるとき、それは太くなる……。
「蛍!!ニュース見てる!?……な、何してるの?」
母親がドアを開けて、部屋に入って来た。
「『何があっても私の部屋には入らないで』って、いつも言ってるでしょ。ママのためにも、そう言ってたのよ」
最初のコメントを投稿しよう!