第一章命令①

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【6月8日(火)午後4時36分】 乱闘を槙圧するために、陸上自衛隊が広島駅に駆けつけた。ロータリーには、窓にスモークフィルムを張った4台の護送車。 自衛隊員は暴れる人たちを押さえつけ、次々と護送車に連行していった。 ――ずいぶんと手荒なまねするな。 表情を曇らせる智久とは対照的に、修一はその光景に目を輝かせて見ていた。 ――なかなか見れるもんじゃない。テレビの『警察24時』でしか見たことがないよな! 「血が騒ぐ!騒ぎたくなってきた!智久、車で行こうぜ!」 修一の感情は、極限まで高ぶっていた。 「まだ言ってるのか!?お前って奴は……捕まったら、大切な免証を没収されるぞ。刑務所行きかもな」 智久は、修一の免許証をぐにゃっと折り曲げた。 「わぁ、やめろ!やっと手に入れたんだ!」慌てる修一。 2人は「返せ」「誰が返すか」と言い合いながら、子猫がじゃれるようにして戯れていた。修一の免許証を右手で高く揚げながら、智久はさっき自分が言った言葉を思い出していた。
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