868人が本棚に入れています
本棚に追加
「電話かぁ。それもこんな時間に――広島駅にいるけど、迎えに来れる?俺は父さんの車で岡山に向かおうとしてる」
『お父さんの車で!?バカなことはやめなさい!智久はそんなことする子じゃないでしょ!修一君と一緒にいると言ったわね。修一君がそそのかしたんでしょ?修一君は、いい噂を聞かないわ。何度も手を切りなさいと言ったでしょ!』
「噂を信じんな!お前に修一の何が分かるってんだ。自分の子供のことさえ理解できない、お前なんかに!車で行くって決めたのは俺だ!――俺は自分を見つめ直す旅に出るよ。俺からの質問です。あんたは――いや、いいや。帰ってきたときに改めて訊く。じゃあ」
『待ちなさい!』
智久は一方的に電話を切ると、心配そうにしている修一と友香の顔を見た。
「母さんからだったんだろ?もう、いいのか?」心配そうに尋ねる修一。
「ああ」
さっきの言葉は、母親が心配して自分を迎えに来てくれるかどうかを確かめるための、テストだった。子供っぽいと感じた。けれど、単純で分かりやすい。
――心配しているのなら、岡山に来てくれる。
好きなようにさせて欲しい。けれど、関心だけは持って欲しい。矛盾した気持ちだ。
――思春期だからなのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!