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エレベーターは途中、4階で停まり、思い詰めた表情をした女性が入ってきた。40歳くらいか?
彼女は一瞬、智久に何か言いかけたが、すぐに下を向いた。
思い詰めた表情、そして大きな荷物。そこから連想されるものは――。
智久は気になって尋ねた。
「お子さん……高校生のお子さんがいますか?」
「……はい。高校生の息子がいます」
「自分も今から岡山に向かうところです――あの、信じていますか?……【王様ゲーム】を」
「信じがたいことです」
「そうですよね」
エレベーターが1階に着き、扉が開いた。
「友達を待たせているので」智久は一礼をして、先に出ようとした。
「待って下さい!お父さんの件は申し訳なく思っています。謝罪が遅くなってごめんなさい。あなたのお父さんからの申し出を、私は断りました。何度も『補償してあげよう』と言って家を訪ねてくるあなたのお父さんに、正直うんざりしていました。熱意というのでしょうか……それがうざいともおもいました」
彼女はふいた。智久は、閉まろうとするエレベーターの扉を手で押さえた。
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