第一章命令①

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修一が丸いボタンを押すと、後ろに下がっていた運転席が前に出てきた。ハンドルは、運転手が握りやすい位置へ自動的に動く。 「スゲェー!ハンドルと運転席が動いた」 修一は、思わず声を上げた。 「でも、エンジンがかからないぞ。何も音がしない」 「エンジンはかかってるよ。ハイブリッドだから、今は電気で無音なんだよ」 「冗談だよ、お前を試したんだよ!真に受けんな――あれ、サイドブレーキは?」 「オートだから、アクセルを踏むと勝手に解錠される。停まれば勝手にかかる」 「しつこいかもしれないけど、冗談だよ。俺は車にメチャ詳しいんだぞ。知ってるに決まってるだろ!お前を試したのだ」 「……疲れないか?知らなかったら知らなかったでいいだろ」 「智久君、知ったかぶりをしてごめんなさい。ボクはミーハーです。1つだけ質問していい?」 「なんだよ、知ったかぶり」 「ナビ役さん、岡山はどっちに行けば?」 智久と友香は、同時に声を張り上げた。 「右!!」 「俺は地元を愛しているから、地元を出たことがないのだ。地理も苦手で……」
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