868人が本棚に入れています
本棚に追加
修一が丸いボタンを押すと、後ろに下がっていた運転席が前に出てきた。ハンドルは、運転手が握りやすい位置へ自動的に動く。
「スゲェー!ハンドルと運転席が動いた」
修一は、思わず声を上げた。
「でも、エンジンがかからないぞ。何も音がしない」
「エンジンはかかってるよ。ハイブリッドだから、今は電気で無音なんだよ」
「冗談だよ、お前を試したんだよ!真に受けんな――あれ、サイドブレーキは?」
「オートだから、アクセルを踏むと勝手に解錠される。停まれば勝手にかかる」
「しつこいかもしれないけど、冗談だよ。俺は車にメチャ詳しいんだぞ。知ってるに決まってるだろ!お前を試したのだ」
「……疲れないか?知らなかったら知らなかったでいいだろ」
「智久君、知ったかぶりをしてごめんなさい。ボクはミーハーです。1つだけ質問していい?」
「なんだよ、知ったかぶり」
「ナビ役さん、岡山はどっちに行けば?」
智久と友香は、同時に声を張り上げた。
「右!!」
「俺は地元を愛しているから、地元を出たことがないのだ。地理も苦手で……」
最初のコメントを投稿しよう!