蝉の声

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誰かの肩越しに猛と視線があってしまった。 私は慌ててバックを持ち 長い迷路の様な廊下を走り抜けて化粧室に急いだ…。 猛をみて興奮しすぎたのか、疲れがたまったのか…ヒューヒューと胸の奥から音がして呼吸が苦しい。 バックから喘息の発作止めの吸入器を探すが …ない… あっ。 あの時だ 料亭に入る前に車の中で吸入して置いてきてしまった…。 …情けない本当に、情けない。 鏡に惨めに口を開き、必死に呼吸する姿が映る。 情けなくって涙が溢れだす。 義母が知ったら又、嫌な顔をされて雅と沙羅に心配をかけてしまう…。 落ち着かなきゃと思えれば思う程、涙が溢れだし余計に呼吸が荒くなる… 酸素が巧く取り込めないと、死まで考えてしまう 幼い沙羅の泣き顔、笑顔、あの愛らしい沙羅にもう逢えなくなるのではと悲しみさえ襲う。
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