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「ただいまー」
ドアを開いて家に入ると、バタバタとお母さんが走ってきた。
「す…っ鈴奈…!!」
明らかに様子がただ事ではない。何故かお母さんが慌てる理由を聞いてもいないのにすごく嫌な予感がした…できるなら耳を塞いでしまいたいくらいに。
「落ち着いて…落ち着いて聞くのよ鈴奈…」
「何か、あったの…?」
お母さんは私を一度見て、すごく言いづらそうに口を開いた。
「海くんが…事故にあったって…今…電話が……」
私は一瞬、目の前が見えなくなった気がした。
海が、事故?…ついさっきまで楽しそうにうみに行こうって話してたじゃない…
「さっきまで…私、海と一緒にいたんだよ…?」
「多分、鈴奈達とかれてからの話よ…」
「さっきまで…うみに行こうって話してたんだよ!?」
「……」
お母さんにそんなこと言ったところで状況は変わらないのはわかっていたけど、そこまで冷静になれなかった。
「…生きてるの?」
すがるように聞いた。
「海は…生きてるの?生きてるよね!?ねぇっ!!」
"生きてる"
その一言が聞きたくてお母さんに詰め寄った。
「…生きてるそうよ」
ガクンと身体から力が抜けて私はへたりこんだ。同時に涙が溢れてきてしまった。
「生きてる…なんだ…生きてるんだ…よかった……よかっ…」
「今は、生きてるって…」
ピタリと涙が止まる。
どうしても聞き流せない一言が聞こえたからだ。
「"今は"って、何…?」
「海くんは今、手術中で……助かる確率は…低いそうよ」
「そんな…」
「鈴奈…病院、行こうか。海くんに会いに…」
「そんな海が死ぬみたいに言わないでよ!!」
「…っ」
「あ…ごめん……病院…行く…」
思わず怒鳴ってしまったことを謝ると、「いいのよ」とお母さんはそっと私を病院へ連れていってくれた。
病院には既に茜と勝也くん、そして海の両親の姿があった。
皆が海の命が助かることを祈っていた。
数時間すると、病院の先生が来て私達に告げた。
「長瀬海くんの親御さん方ですか?」
「はい…」
海の両親が立ち上がり先生に近寄る。
私達も同じように近寄った。
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