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さんざんとこの街を批判する僕がここにいるのは、目的があるからだ。
幼馴染に会いに行くのだ。
この街に売られてしまった幼馴染に。
会いに行くのだ。
遊郭にお金を払って。
彼女の時間を買いに行くのだ。
「へいらっしゃい。」
真っ赤な暖簾をくぐれば威勢のいい男が近づいてくる。
「ご指名は?」
「鬼灯花魁。」
「少々お待ちを。」
男はにへらっと笑って奥へと引っ込んだ。
いつ来てもここにはなれない。
鼻を突くような練香水の匂い。
うっとおしい紫煙。
女どもの啼き声。
頭が痛くなってくる。
米神をグッと抑えたところで、先ほどの男が戻ってきた。
「申し訳ねぇ、鬼灯花魁は今、別の客を取っててねぇ……他に指名はないかい?」
「いや、鬼灯花魁がいいんだ。」
そう言って僕は懐に手を入れて小銭の入った袋を取り出し、男に掴ませた。
「っ……少々お待ちを。」
そう言って男はまた奥に引っ込んでいった。
ここは、金がものをいう世界。
なんと簡単なものだろう。
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