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「しゅーう~!おっはよ~」
「おぅ、秀。相変わらず不機嫌そうな顔してんな」
新しいクラス、二年四組。その教室に入って最初に秀太にかけられた声は、もうすっかり馴染みの二人のものだった。一人は活発そうなショートカットの、小柄な少女。もう一人は大きながたいに不釣り合いな爽やか笑顔の青年。少女――神奈凛とは中学からの付き合い、青年――稲森健司とは小学校からの付き合いだ。
「お前等は朝からうるせえな。だいたい凛!お前クラス表見たのか?別のクラスだろうがっ!チャイムがなる前に戻っとけよ」
秀太は自分の席――新クラスの初日なので席は出席番号順――に座り、大袈裟にため息を吐きながら凛を適当に手であしらうと、凛はぷくっと頬を膨らませて抗議した。
「いきなりそんな邪険に扱わなくてもいいでしょ?!健司が私たちに相談したい事があるっていうから…‥」
「健司が?」
隣の‥‥自分の席ではない机に座る健司を見てみると、気まずそうに視線を泳がしている。
な‥‥なんだこいつ。気持ち悪りぃ‥‥
「んで、何だよ?話っ――」
秀太が口を開くと同時にチャイムがなった。凛は時間のことなどすっかり忘れていたのかガタンと立ち上がると、
「げ、やばっ!とりあえず私、教室にもどるからっ!またお昼ね~」
手を振りながら慌てて自分の教室へと戻っていった。そんな凛を見送ると健司も立ち上がり、
「お、俺も‥‥自分の席に戻るわ」
と、どことなくぎこちない動きで自分の席へ戻った。いつもはゆとりという空気をまとっているような健司だけに、今日の彼は別人のように見える。
やっぱ気持ち悪りぃな‥‥。
席に戻る健司の背中をぼけっと眺めていると、チャイムが鳴っても依然静まらない教室の扉が静かに開けられた。
男が一人、出席簿を片手に入ってくると、教室内が一瞬にしてしんと静まり返える。どの生徒も例外なく、入ってきた男に注目している。
角刈りにされた金髪、深く輝くやや垂れた青い瞳、均整のとれた隆々の筋肉。
そう、入ってきたのは大柄な外国人だったのだ。
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