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「先生、これってどういう意味ですか?」
よほど現状を理解できなかったのか、それともまだ余裕があるのか、秀太はグレイスにわざとらしいほど丁寧に質問をした。
ようやく凛を見つけたと思っていたら、凛は桃子と一緒にいて、その二人は協力して秀太を襲ってくる。凛の手には細身の剣が握られているため、普通に洒落にならない。
桃子はというと先端に鈍く光る赤い石を付けた木の杖を持って振り回してくる。ゲームなどでは杖といえば攻撃力は微々たるものというのが相場だが、これを脳天に喰らえば軽く意識も飛べるだろう。
「君は彼女に恨まれるようなことをしたのか?」
「馬鹿言うなよ。命狙われるほど恨まれる覚えなんてあるか」
「まぁ、そうだろうな。だとしたら――」
グレイスはとぼけたような表情を一転、キッとバーゲンを睨みつける。
「また記憶をいじったな?!」
「くくく、なぁに。こいつの奥底に眠っていた負の記憶を蘇らせ、多少脚色を加えたのだよ。実に簡単だったよ」
「まぁ……凛は恐ろしく単純なやつだからな」
「うるさーいっ!」
「秀太先輩、最低ですっ!」
秀太の半分呆れたような言葉は、二人の謎の怒りに油を注いだだけだった。
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