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おい……と、秀太はグレイスを横目に見ながら、
「これも記憶をいじられてこうなってるだけだよな?」
秀太の願望にも似たその質問に、グレイスは静かに首を横にふった。
「その可能性は、極めて低い。彼の消え方が不自然だとは思わなかったか?気を失っていた神奈君はともかく、彼まで声も出さずに消えたのだ」
それに……と、付け加える。
「ハーゲンの奴は記憶に干渉できるといっても、しょせん使い魔だ。親や生い立ちなど、根本的なものは流石に変えられない」
背中から「だれが使い魔だ!」という怒鳴り声とともにグレイスの中傷も聞こえてくるが、それに反応する者は誰一人としていなかった。
「じゃあ……俺達の約束も……もとから嘘だったのか?」
「違うっ!」
今にも泣き出しそうな秀太の声に、健司は間髪入れず答える。
「あれは…あれだけは違うっ……」
急に低くなったトーンと共に、健司はしばらく俯くが、次に顔を上げたときには、また冷たい表情に戻っていた。
「頼むから、動くなよ。これは冗談なんかじゃない……本気だぜ」
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