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動けない三人と動かない一人。そんな四人を眺めながら、ハーゲンは桃子を引っ張りマグマの溜まっている穴の淵までゆっくりと歩く。
「ついに…ついに私の長年の夢が叶うときがきた……ふふふ…ふははははっ」
「いやっ、いやぁっ!先輩っ!助けてっ!!」
マグマを近くにして、今まで震えながらも大人しくしていた桃子が、瞳に涙をためながら激しく抵抗を始めた。マグマの熱気が、彼女に死をリアルに感じさせたのかもしれない。
「………」
額に汗を浮かべながらも微動だにしない健司を、秀太が睨みつける。が、自分に向けられたままの銃口と健司の瞳を交互に見やり、秀太は何かに気づいたようにはっとなる。
健司に向かって小さく頷いた……ような気がした。
「健司……撃ちたきゃ……撃ちたきゃ撃ちやがれっ、馬鹿やろう!」
秀太はそう叫ぶなり健司に背を向け、ハーゲンと桃子に向かって走り出す。
銃声は聞こえない。
「何をしているっ!早く撃たんかぁっ」
ハーゲンの怒鳴り声。その直後――
ハーゲンの左頬に、秀太の右フックが炸裂した。よろめくハーゲンは、それでも渾身の力をこめ、桃子を穴に向かって突き落とす。秀太は慌てて左手を差し出すが、その手は虚しく空をきる。
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