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あの時奪ったケーキがあまりにも美味しくて、洋菓子に開眼した私。 でも実はあのケーキは應治が年上の女に貰った物で、デパートに出店している有名なパティシエの作ったケーキだったらしい。 後から聞いて剣太郎に八つ当たりをしたのを覚えている。 未だにあの店のケーキは自分へのご褒美に買うほど気に入っているのが何とも腹立たしいけれど。 そして今日もそのケーキを携えて私は家路を急いでいた。 電車から降りて人通りの少ない道を歩き出した私の携帯電話がタイミング良く鳴り出す。相手が想像ついて、歩きながら受話ボタンを押した。 『お疲れ~どう?実家の喫茶店の仕事は?』 圭の元気な声が電話口から響く。 佐々木圭は元同僚だ。26歳の明るくて溌剌とした仕事の出来る子でプライベートでも仲良くしていた。飲み友達でもある圭とは夜な夜なバーに飲みに行っていた時期もあった。 「まだ一ヶ月も経っていないからまだ適当な感じだけど、まあなんとかやっていけそうかな。」
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