はじめに

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 深夜とは子供にとっては未知の世界であり、大人への階段であった。そしてこの怪しくも妖しい時間帯はナイトシーンの多い『ウルトラセブン』の作風に見事にマッチしていた。 本放送は日曜の19:00~30の所謂ゴールデンタイムであるため、リアルタイム世代には全く理解に苦しむと思う。しかし、この深夜の時間帯に初めて『ウルトラセブン』を見たという数少ない者の一人である私には、『ウルトラセブン』は 夜 という大人の世界の象徴であり、決して子供が踏み入れることは許されない時間への「憧れ」そのものだったのである。 前置きが長くなって大変申し訳ないが、ところで、私が愛した『ウルトラセブン』は今でも幸いなことにウルトラシリーズの中でも人気の高い作品として取り上げられ、様々な批評や解説を網羅した書籍が数多く出版されている。良し悪しはあれど、自分の好きな作品の読み物が多いことは嬉しい限りであり、ここでは名指しを控えるが各話解説がこれ以上にない程細かくしっかりしたものも出され、感心したものであった。 ところが、書籍の基本である怪獣図鑑は未だに決定版というものを見た覚えがない。参考にした資料の違いで異なる箇所が出てくるのであろうが、中には資料や本編すら見たこともないのではと思える酷い図鑑もあった。 どんなに作品に対する批評や研究が進んだところで、基本である怪獣図鑑がしっかりしていなければ意味が無いではないか。私達は初めから各話に込められたメッセージだとか、大人の事情を考慮して見ていたわけではない。ヒーローがいて、そして怪獣ありきで見ていたはずである。その基本を忘れて理屈をこねるだけでは仕方ない。
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