「秘密」

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「みちるー、朝食できたわよー」 歯ブラシを口にくわえたままの状態で、母さんの呼びかけに、「ふぁーい」とだらしなく返事をした。 いつもと変わらない平日の朝、オレは身支度をして、朝食のトーストと目玉焼きを食べると、それを牛乳で流しこんだ。 カバンと部活で使うラケットを肩にかけ、家を出る。 今日暑いなー。 そう思いながら、オレは夏の日差しによって存分に熱せられたアスファルトの上を歩いていた。 学校までは徒歩10分ぐらいだが、こうも気温が高いと行くのもめんどくさい。 「あっちー」とうなだれてると、「おはよう!」と聞き慣れた声がした。 思わず、ギクッと音が出そうなほど、オレは飛び上がりそうになった。 声の主は、近所に住んでるオバサンだった。 「今日も暑いねー」 「そうですね…」 適当に相づちを打って、興味の無さそうな態度を装う。 オバサンは「ゴミ収集の人来ちゃうから行くねー」と行って、手を振りながら違う道へと入っていった。 オレは内心で、胸を撫で下ろしていた。 良かった、バレなかった、いや、バレるはず無いんだけど。 オバサンの背中を見ながら、オレは世の中不思議だなと、感慨深くなった。 まさか、あんないかにも人の良さそうな方が、「夫には内緒で15歳年下の男と浮気している」とはねえ。 軽く苦笑し、オレは登校道を歩いていった。
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