プロローグ

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「とーちゃん!巨大ガニ3体接近してるよ!」 「俺が叩く、シエンは万が一の場合に追撃態勢!」 「了解!」 シエンは攻撃職の女の子だ。 水属性の剣を所持し、ショートカットの可愛い奴。 とわだからとーちゃん、という彼女のセンスには驚いたが、今になっては娘の様に面倒を見ている。 「《ウィンドスレイ》!」 範囲攻撃スキル、《ウィンドスキル》。『風城』の成せる疾風で敵を切り裂く技だ。 横に払いダメージを負わせるがゴーレムは持ちこたえた、一瞬にして冷や汗が出る。 (まずい、狙われる) 「とーちゃん下がって!」 後ろから聞こえる声はシエンだ、《ロードウェイ》というスキルを用いてゴーレムの懐に急接近する。 水属性の剣はゴーレムを穿ち引き抜いた。握った右手を体の左横に寄せて、右にいたゴーレムに向かって振り抜き、凪払う。 斬る動作とは違う、ゴーレムを反動で動かしたという方が正しいだろう。 「《バーサク》!」 咄嗟に口に走るスキル詠唱、《バーサク》。漢字で言い表すなら狂戦士化だ。 身体の血が逆流するように苦しく熱く、敵を狩る衝動に駆られる攻撃力上昇スキル。 そして自身の肉体制御を打ち消す凶悪なスキル。 約20秒間、見える敵に対して攻撃を加えるというもの。その適応期間内はスキルも逃亡も出来ない。 「らあああッ!」 残り2体のゴーレムを瞬殺し真っ赤に染まった身体は、瞬時的とはいえ獣の様に強化された感知力に「周りに敵は存在しない」という安全性を察知した為か、急激に冷めていく。 「…すまない」 「大丈夫?怪我はない?」 シエンは背中を向けてしゃがむ、その姿を見た後に手の平を向けて遠慮のサインをする。 「歩ける、心配するな」 よろよろとフラつきながら仲間の元に戻るとクロスロードがこちらを見る。 「慣れてきたな、とわ」 クロスロードは兜を外して微笑む、前までは歩けない程だったのだから随分な進歩だ。 言われるのも無理はない。
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