プレイヤーキル

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「シエン、大丈夫か?」 「あー…う、とーちゃん?私、死んだの?」 「そうだ、状況を説明できるか?」 「…アレク」 かつて自分のギルドマスターだった人の名前を、呼び捨てで言い放つ。 「『闇市』アレク、その他数名…。クロさんは言ってた、多分目的は『猫の集会』から集めたお金なんじゃないかって」 ゾクリとする。 『闇市』のギルドマスターは一体どうやってその情報を仕入れたっていうんだ? 思考が、停止した。 「犬丸ゥゥゥゥゥゥウウウウウ!!!」 叫ぶ。 目の前にいるシエンの事なんて見ずに、周りにいるプレイヤーもNPCも気にせず。 猛々しく。勇ましく。 獰猛な獣のように。 「はいー!」 四足歩行、獰猛な瞳。 地面を削るように走り抜ける疾風の物影がやってくる。 紛れもない犬丸姫で、 紛れもない犬丸姫なのだが、 それは姫と呼ぶには優雅さも慈愛も優しさもなかった。 犬丸と呼べる程可愛い者ではない、鋭い眼孔に荒ぶった気配は狼と呼ぶに相応しい。 「狩りの時間だ」 「はい」 シエンは何も言わなかった。いや、言えなかったのだ。 まさしくその姿は争いを好む修羅そのものだった。そしてその隣にいる犬丸姫も、その従者に相応しい威圧感を背中に持っている。 シエンにとって『とーちゃん』は師匠の存在だった。しかしシエンの見ていた『とーちゃん』は六刃の一人としての『とーちゃん』ではなかった。 六刃の風、とわ。 最強にして疾風に去ったトワイライト・イルミス・エーベルヴァインの弟子、旋風のとわ。 「シエンは後から来い、犬丸はシエンに騎馬笛を」 「私に乗れるかどうか…」 「乗れろ」 威圧的な声に押される。 乗れろ、もはや、命令ですらない。 「…心配すんな、お前なら乗れるさ。お前は百レベルの俺達と一緒に狩ってきた、そんな馬一匹乗れなくてどうする」 とわの顔が軽く緩み、 そしてまた引き締まり、騎龍笛を吹いた。やってきた騎龍に乗り、犬丸も同様に乗る。 騎龍に乗れる師に追いつけずして何が弟子か、シエンも追いつくように騎馬笛を吹いて街を駆け出すのだった。
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