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「《半月斬》!」
黒騎士がスキルを詠唱する、前方に半円形に剣撃を巻き起こす技だ。アレクもろとも吹き飛ばすが、そのアレクもろとも俺も吹き飛んでしまいかねない。
アレクの鎧を蹴って、超人的に高まった《バーサク》の力で飛翔する。真上に、だ。
飛んだ洞窟内は眩しかった、氷壁爆発で吹き飛んだ敵達に那奈のスキルが追撃していたのだ。光の矢が無数に飛び、薄暗い洞窟を明るく染め上げている。
そんな光の矢を上手く避けつつ、犬丸はガントレットで追撃を行う。
ガントレットが犬丸の主力だ、麒麟双撃を欲しがっていた理由もガントレット装備だからに他ならない。
俺が着地する頃には大半がライフ0になっていた。
最後の一人も、犬丸が殴り飛ばしてライフ0になる。
圧倒的な勝利だった。
「…くしゅっ」
黒騎士のくしゃみが響く、静寂の中での黒騎士のくしゃみは《バーサク》が切れた事を意味し、つまりは戦闘終了を意味する。
「クロ、よく《バーサク》中にスキルを出せたな」
「とわこそ、《バーサク》中にジャンプなんて凄いじゃないか。那奈さんもよくやった」
《バーサク》は身体が戦闘を欲する野獣に化す、スキルや回復さえ使用できない状況が20秒続くはずだった。
「…練習すれば成長するんだな、俺もお前も」
ゲームの頃とは違う。
今、ようやく気付いた。
「安全地点。ブルーバード以外でどこかないか」
「ブルーバード以外か、やはりアザカとアレクが?」
「ああ。六刃の二人が来たんじゃ勝てん、ブルーバードから逃げないとならない」
「…なら考えがある、デス火山フィールド手前。スノーアイス」
スノーアイスは80レベルくらいの地域だ。
確かに追っ手は減る。
「スノーアイスは六刃の…火がいると聞きました、もしその人がアレクさん側だったら…」
「それはない」
クロが言う。
鉱山採掘所を退出し、シエンが見えてきた辺りでクロは言った。
「六刃の…烈火、彼等とは一緒に塔に登った事がある」
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